過日、生まれてから幼稚園に上がるまで育った地域を歩く機会がありました。小学校に上がってからも、祖父母が住んでいましたから事あるごとに帰省はしていたのですが、歩いて回るのは実に数十年ぶりの事だったと思います。
子供の頃は、近くの神社に行くのはちょっとした冒険だったのですが、ほんの数分で到着。「この川に落ちたらおぼれちゃう。」と思っていた用水は、今の体力でも自力で飛び越えることの出来る川幅。
あれほど広いと思っていた道は、普通自動車のすれ違いも厳しい幅しかありません。
「54歳になるが、この川やこの道のイメージは、小学生のままだったんだなー。」なんて幼いころに思いを馳せながら更に歩いていると、向こうから腰の曲がったおじいちゃんが歩いて来ます。軽く頭を下げながらやり過ごそうとすると、そのおじいちゃんはすれ違いざまに「やっちゃんかい?」と。
「はい。」と私。
私は、その声を聞いた一瞬で思い出しました。
その昔、探検と称してとあるビニールハウスに忍び込むと、そこにはたくさんの花が。何の花だったかは忘れてしまいましたが、まだつぼみだったその花を褒められたい一心で「お母さんに持って行こう!!」と思い付き、大量に抜き取って意気揚々と家に帰りました。
その後に起ったことは、想像がつきますよね。
そうです。「やっちゃんかい?」と声を掛けて来たおじいさんは、そのビニールハウスで花を栽培していた当時のお兄さんでした。
あの日父親から促され、最後にやっと言えた言葉が、「ごめんさい。」。そして、45年ぶりにお会いして、最初に出た言葉も、やはり「ごめんさい。」だったというお話です。
以上です。