アメリカ出張の締めくくりは、少し堅いお話しです。
今回出張の目的の一つでもあったアメリカの中古住宅市場についてです。
「なんでアメリカの中古住宅は活況なのか?」を確かめたくて、いろいろと話を聞いてきました。結論から言うと、以下。
・毎年4万~5万件に永住権が発給される
・中古住宅購入税制メリットがある
・外国人にも中古住宅購入により税制のメリットが生まれる可能性がる
・家は、常に住み替える物と言う習慣、感覚
上記が主な理由だと納得しました。
2017年の永住権申請者は、14,352,013件。アメリカ政府は、その中から87,610件の申請者に当選を通知しています。この当選数は、その後の辞退や申請資格を満たさない数なども見越していて、実際には50,000件程度にグリーンカードは発給されるようです。しかし、それでも年に50,000件永住権を得る家族が増えると言う計算です。この数字だけを取って見ても住宅需要は旺盛と言えるでしょう。
次に、「アメリカの中古不動産の減価償却メリット」という点。そもそも減価償却とは、時間の経過等により価値が減っていく資産(建物等)が対象となるもの。ご存知の通り、減価償却資産の取得金額は、取得した時点では全額経費になりません。従って、法定耐用年数によって経費化して行くことになります。ただ、建物の法定耐用年数は、中古住宅物件で木造の場合は築22年。従って、築22年を超えるような中古物件なら、簡便法を使って償却期間を「4年」にすることができます。例えば築22年を超えた建物の価値が1000万円の物件であれば、4年間で毎年250万円ずつ償却、すなわち経費化していくことができるのです。もちろん土地は別です。ただ、日本の場合、築22年を超えるような中古住宅ともなると、「価格」=「土地の価値」となり、建物の価値はほぼ0。要は、いくら築22年を超える物件であり4年という短期間で償却できるとしても、そのような物件自体あまり存在しないのが現状です。しかし、アメリカの不動産の場合は、築22年を超えた建物でも、十分な価値が認められる物件が数多く存在します。実際、築30年、40年の木造住宅でも、取引価格のうち、建物の価値が8割で土地の価値が2割といった物件はザラに存在していました。当然ですが、このように建物価値の高い物件は、ことあるごとにしっかりとリノベーションされていますので、外部も室内も、築30~40年などと言う古さは全く感じません。
また、外国人であっても、例えば日本国内に居住して、日本国で納税している人であれば、アメリカの不動産から得られる賃貸収入等は、日本で申告し、納税することになりますから、当然、減価償却も日本の税法に則って処理することになります。つまり、先の物件のように建物価値が大きいアメリカ不動産は加速度償却できるメリットが生まれる可能性があります。
続いて、「家は、常に住み替えて行く物」と言う習慣というか感覚。これは、言うまでもありません。家族構成や収入構成の変化によって、引っ越しするのは当たり前なのです。従って、その環境に応じた物件にはそれなりの需要があります。それに引きかえと言うわけではありませんが、日本の住宅は、一生の買い物であり、終の棲家的発想はほとんどですから、この辺考え方がまったく異なります。
因みに、日本の住宅事情を物語るデータを野村総研が2017年に出しています。それによると、2033年には日本の総住宅件数7123万戸に対して、その30%強に当たる2166万戸が空き家になるとのこと。
要するに、中古住宅には住まずに新築するという日本の特徴を如実に表したデータですよね。
まあ、少し難しい話になりましたが、参考まで、アメリカの中古住宅市場を私なりにレポートさせて頂きました。
以上です。