もう空港の話は無いと思いきや、思い出しました。
それは、30年ほど前に初めてアメリカを一人旅した時のことです。
お金の無い旅では、海外でタクシーに乗ることなどまずあり得ないと思っていました。しかし、何かあったらと言うことで、覚えていったタクシーの中での会話を想定した問答。
それは「to airport」と「international」の二つのみ。
これさえ運転手に通じたら、空港の国際線ターミナルに行けて日本に帰れると思っていたのです。しかしです、事件は起こりました。たしかメンフィスの空港からワシントンに向かう時だったと思います。
メンフィスのホテルで寝坊したのです。
リムジンバスに乗って空港まで行ったら、とても間に合いません。仕方なくタクシーを使いました。運転手に「to airport」と告げます。
運転手はうなずきます。
そこまでは良かったのですが、すぐさま運転手は質問を繰り返してきます。残念ながら私には何を言っているのかさっぱり分かりません。ただ、一方的な質問の中に「terminal」と言っているのがなんとか分かったので、ようやく思いつきました。そうです、国際線のターミナルなのか、国内線のターミナルなのかを聞いていたのです。
「そうか!!」
でも、残念ながら私のタクシー内想定問答集の中には「国内線ターミナル」なる英単語は含まれていませんでした。運悪く、英単語のあんちょこもスーツケースの中。
どうしても、「ドメスティック」が出てこない。
運転手は、英語の苦手な外国人だとあきらめて、勝手な判断で、私を国際線ターミナルに降ろそうとしました。しかし、私は気が付きました。「ここじゃない。」空港の車寄せに掲げられているキャリアの看板が、どう見ても国際線のキャリアだったのです。仮に時間に余裕があれば、あきらめて国際線ターミナルから国内線ターミナルまで歩いたと思います。しかし、時間が無いのです。
私は、手を左右に大きく振りながら、日本語で「ここじゃない!」「国内線、国内線!!」と告げると、運転手が奇跡的に「domestic」に連れて行ってくれました。
「セーフ!!」
この一件以来、「domestic」と言う単語が私の脳裏にこびりつきました。
以上です。