かなりドメスティック話で恐縮ですが、我々の仲間内では有名な「ウィリアム事件」と言う伝説があります。
これは、今から20年ほど前、長野市内にある老舗のステーキ屋さんで起こった事件です。
皆さんも記憶にあると思いますが、1998年、長野冬季オリンピック・パラリンピックが開催されました。その時に表彰式の運営ボランティアとしてこのオリンピック・パラリンピックの運営を支えた仲間の打ち上げをこの老舗ステーキさんで開催した時の話です。
当時、このお店の経営者も我々の仲間として活動してくれた関係で、打ち上げ場所の提供もしてくれました。
安い予算でしたが、お店も気を遣ってくれて、美味しいコース料理が運ばれて来ます。ワインもしこたま頂いて、いよいよメインディッシュのステーキです。確かサーロインだったと思うのですが、ウェイターさんが、お肉の焼き加減をそれぞれに聞いて行く段取りになりました。各々が「ミディアム」「ミディアムレア」そして「レア」などと順調に聞き取り調査は進みます。しかし、ある方のところまで行くと聞き取りが滞りました。その方は、とてもユニークな方で、漫才で言えばボケの担当。我々の人気者です。その方のところでウェイターさんが、「はい?」「えっ?」と、戸惑っています。耳をそばだてるとその方は小声で「ウィリアム。」と言っているのです。「えっ、ウィリアム???」。
そうです。その日、お肉をよく焼いて欲しかったのはその方だけ。要は、「ウェルダン」の言葉を失念し、それなら「よく焼いて下さい。」と言えばいいのに、無理して英語で伝えようとして出て来た言葉が「ウィリアム。」だったのです。
こうして伝説の「ウィリアム事件」が起こりました。その後も、この方のユニークさとユーモア、そしてボケには拍車が掛り、今も人気者としてその存在感を増していると言うお話です。
で、後日談があります。
過日、20年ぶりにその老舗ステーキ屋さんで当時の参加者が全員揃って同窓会が開催されました。20年前と同じく今回もコース料理。ワインもたくさん頂き、同窓会も盛り上がります。そしていよいよメインディッシュです。参加者すべてが「ウィリアム事件」の再来を期待する時間がやって来ました。
しかしです。今回、焼き方は一律で、焼き加減は聞いて貰えなかったのです。今どきは、ステーキ自体は「ミディアムレア」統一で運ばれて来ます。ただ、ステーキが乗った鉄板には、自分で焼き方の調整が出来る更に熱した部分が据えてあり、その部分で自分好みの焼き方に調整するのだそうで、決して「ウィリアムな方」への配慮では無かったと言う落ちとなります。
聞きたかったなー、「ウィリアム!!!」。
以上です。