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太郎のために 2020.8.4

 いきなりですが、Oさんは昨年の台風19号災害で自宅が床上1.8ⅿまで浸水してしまった被災者であり、私の20数年来の先輩となります。

 このOさんが、床上浸水したご自宅をリフォームされ過日その工事が終了したので、御礼かたがた挨拶に行って来ました。

 私が言うのもおかしいですが、まだまだ若いと思っていたら、Oさんも60歳を超えたようです。話の中で「やっさんさ、(←私のことです。)60歳を超えてこれだけのお金をかけるって、相当の勇気がいるもんだよ。」「まあさ、被災者の中には、俺よりも年上で80歳を超える人もたくさんいるけどさー、やはり大きな決断だったなー。」

 それはそうでしょう。

 O先輩は、数年前に最愛の奥さんを亡くされました。ぶっきらぼうなO先輩とは大違いで、とても気さくで人当たりのいい方でした。20数年前は、たしか携帯電話より会社に電話をして取り次いでいただくことが多く、ある団体の事業が佳境を迎えると、それこそ1日に何回も仕事とは別の電話を掛けるのですが、嫌な顔と言うか、嫌な声一つせずに明るく取り次いで頂いたのが印象に残っています。

 Oさんのお子さんたちは立派に独立されています。従って今回リフォームをしても、Oさんはひとり暮らしとなります。災害も怖いので、マンションと言う選択肢もあったそうです。

 それでも大きなお金を掛けてリフォームしたわけは?

 そこには、生前奥さんがとても可愛がっていた「太郎」の存在がありました。

 「太郎」は、16歳のビーグル犬です。

 被災直後は、一時的にアパート暮らしを余儀なくされたOさん。残念ながらアパートでは「太郎」と一緒に暮らすことは許されませんでした。その間「太郎」は、亡くなった奥さんの妹さん家族が面倒を見ていてくれたそうです。そんな状況の中、迷に迷った結果、再度自宅をリフォームして、「太郎」と暮らすことを決断したそうです。

 その心中を「太郎」の頭をなでながら笑顔で話すOさんに、亡くなった奥さんの姿がかぶってしまい、涙が出そうになりました。

 Oさん、「太郎」はもちろん、奥さんも喜んでいますね。

 以上です。

 

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